「対話って何の役に立つんですか?」に真剣に応えてみる

どうも、WCDC(ワールド・カフェ・デザイン コミュニティ)共同主催者の中岡です。

えっと、まぁ、標題の通りです。

こうした問いを不問に付すことは容易ですが、わたしとしては答えられなければいけないと思っています。いや、答えられないにせよ、応えようとし続けなければいけないでしょう。

わたしは、その人の思想を端的に知るには、その人の最も根源的な信念を素朴に問うことで垣間見えると思っていますし、そこで”本当のところ”が見えてくると思います。

というわけで、なんにせよ、これに応えられなければいけないですし、このブログがワールド・カフェ・デザイン コミュニティに関心のある方が読んでいるのであれば、決して曖昧なままにしておくことはできないでしょう。

ということで、まぁ、ちょっと取り組んでみたいと思います。

 

「役に立つ」とは

まず、この問いについて考えていく前にはっきりとしておかねばならないところがあります。

この問いを問うているのはどのような人間か、というところです。わたしが思うに、こう問う人間はざっくり二つのパターンに分けられると思います。

一つは、対話の社会的な意義を知りたい人
もう一つは、自分にとっての対話経験の意義を知りたい人

です。

一つ目の方は、社会的な意義を求めているわけですから、なんらか人間社会における”問題”の解決に寄与していることを知りたいのでしょう。そして、二つ目の方は、自分の問題、自分ごとの問題の解決に寄与していることを知りたいと思われます。

二つのパターンはその者が対象としている問題の性質に違いがあります。そのため、こうした問題の性質を見極め、その者がどのような性質の問題の解決を求めているか、がわかれば、そのコンテクスト(文脈)においての対話の有用性を説明することができれば「何の役に立つのか?」という問いへある程度了解をもらえる程度に説明が可能でしょう。

しかしながら、これではツマラナイはずです。このような個別具体的なコンテクストに合わせた説明で実際は問題ないか、と思いますが、WCDCをやっている人間がこのような段階で思考に終わらせてしまうことはできないと思います。

ですので、もう少し進むことにします。重要なのは、社会的にしろ、個人的にしろ、人間の生における実践上の課題(問題)をなぜ対話によって解決できるのか?というところです。

 

「問題を解決する」とは

なぜ対話が問題を解決できるのでしょうか?

いや、一旦立ち止まると、対話が解決できない問題もあるのではないでしょうか?一方で、解決のために対話という手法が適している問題もあるのではないでしょうか?

この辺りの見極めは対話実践者にとって喫緊のものかと思います。もちろん、わたしたちにおいても同様です。そして、ここでは、まず「問題を解決する」ということが定義されていなければならないでしょう。

定説だと「問題」とは「理想と現実の差異」のことを指し示す言葉です。

そして「解決する」というのは、この差異を埋めること。つまり、理想イメージを現実化する行為を指し示します。いうなれば、理想の社会と現実の社会のギャップ、理想の自分と現実の自分のギャップ、これらを埋める活動全てが「解決行動」です。

 

不可能性と二つの分化

さて、ある程度の見取り図ができたと思います。「対話が何の役に立つのか」を知りたい人は大きく二つに分かれます(この問いが別の意図で投げ出されたものでない限り)。それは、社会的意義か自分の実生活においての意義です。そして、それらの有用性は問いを投げかけた人のコンテクストに依存しているため、それに合わせることができれば、ある程度の了解は得れるが、それで満足するのではなく、この有用性(問題解決性)そのものと対話の関係を説明することをここでは目指してきました。そして、前節では「問題を解決する」という言葉の意義を定めました。

さて、では「なぜ対話は問題を解決する」のか、つまり「なぜ対話が理想と現実の差異を埋めることができる」のでしょうか?

結論から言えば「対話によって埋めることはできない」と思っています。

ホームレスの問題、自殺の問題、慰安婦の問題、社会的マイノリティの問題、最近では、強姦や不倫、アウティング。日常場面において、上司との関係、家族との関係、自分の人生について、とさまざまな問題がありますが、そのどれも対話によって解決することは不可能だとわたしは思っています。

ですが、ここには二つの分化(分かれ道)が見られると思います。

一つは、”誰が”対話するのか?というところ、もう一つは実践上の問題です。

誰が対話するのか?

一つ目ですが、もし、上記のさまざまな問題について”当事者でない人”が対話しているのならば、対話による問題の解決は不可能かと思います。マスコミや市民、政治家や企業が対話しているのならば、その時点で問題の解決は不可能です。なぜなら、彼らにとっての問題は自分の問題ではなく、外部にあるからです。そのため、問題は対話によって得られた気づきは具体的なアクションまで展開しなければ「対話」は無意味と化すでしょう。

しかしながら、当事者による対話であれば、そうとは限りません。

「自分の問題に自分ではない誰かが耳を傾けてくれ、一緒に考えてくれた。」

このような体験は、実際の問題の解決にそのときは至らずとも、なんらかの変化が当事者自身に起こります。つまり、表面上では、なんらの解決に至っていないが、別の問題が解決されている場合があるのです。そして、その変化は実際の問題より重要であることが少なくありません。

これが一つ目の「分化」です。つまり、対話によって問題を解決することはできなかったが、わたしたちが表面的に認識されていない当事者にとっての問題解決が対話によって成されたということです。

 

実践上の問題

もう一つは、実践上の問題です。

これは先ほども書きましたが、活動家にとって対話は手法です。それによる気づきによって、具体的なアクションを展開させ、外部の問題を解決に至らせなければなりません。それゆえ、対話による解決は不可能です。対話の有用性、つまり、解決が導かれるかどうかは、その後の実践に依存しているのです。ですが、ここでも、一つ目のような変化が起こっている場合があります。それは次のような変化です。

「同じ組織にいて、自分の組織が誰かの役に立っているようではあるけれど、一方で私自身はどうだろうか?いつも言われた仕事をこなしてはいて、どうやら誰かの役に立っているようだから、経済的豊かさは巡ってはくるが、なんだかもどかしい。違和感がある。」

こういった人は現代において少なくないかと思います。このような人にとっての”問題”は自分の力の確かさを認識し、非経済的側面での意味としての喜びや満足を得られていないことです。

しかしながら、もし、活動する組織、分業が進んだ組織の各構成員が互いの喜びや経験を対話によって共有することをはじめたら、どうでしょうか?

先のような人は自分の力(自分の仕事の意義)を実感できるかもしれませんし、もしかしたら、彼らの間にもっとできることが見えてくるかもしれません。このときに、間に生まれる気づきが、おそらく、われわれが「集合知(コレクティブ・インテリジェンス)」と呼んでいるものの一つの側面かと思います。

対話はこのような意味で社会的な意味での問題解決を促進しつつ、その解決に関わっている当事者の問題を解決させている場合があります。

これが二つ目の”分化”です。

 

このような二つの分化を認識すると、本論の問いにわたしたちの納得が深まる程度に応えられることができることになったでしょう。

以上の通り、対話は決して(表面的な)問題を解決しません。しかし、その一方で、対話は当事者個々人の内的な問題を潜在的に解決しつつ、(表面的な)問題を解決する土壌を育てていると思われるのです。

 

あなたへ

以上が、現段階での標題の問いに対するわたしの応えです。これはWCDCを通して述べていますが、共同運営者の古瀬とは少し異なってくるかもしれません。また、今後変わっていくかもしれません。

もしかすると、異論がある方がいるかもしれません。一部了解できるが、わたしはこうも思う、という方もいるかもしれません。また、今は何も明確に思わなくても、なんだか”違和感”を感じている方もいるかもしれません。

わたしはあなたのような存在がいることを大変有り難く思います。

そして、あなたと一緒に対話の場づくりの実践を続けながら、お話していくことができれば、それは幸せなことだと思います。

また、全然わたしが述べたことに関心はないが、WCDCにはかなり関心があります、という方もいるかもしれません。

あなたと交流できることもわたしによって本当に幸いなことです。

大切なのは”差異”なのです。差異はわたしとあなたのポテンシャルそのものです。あーだこーだ、と真剣に、かつ、柔軟に両端を行き来することこそが何かを生み出す活動的源泉だと私は理解しています。

その差異の間を反復し続けることで何が生まれるか、そして、そんなわたしたちと世界の間で何がうまれていくか、それが楽しみでならないのです。

みなさまにお会いできること、心から楽しみにしています。

2016.9.11 中岡 晃也

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